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小学校1年生の算数には、大きな壁が2つあります。1つは「繰り上がりのある足し算」そしてもう1つは、今回解説をする「繰り下がりのある引き算」です。この単元は、先に学習した繰り上がりのある足し算と同様、多くの児童がつまずきやすい単元の一つです。
算数が苦手な子にとって、ここでつまずいてしまうと、1年生という早い段階で「算数なんて嫌い!」という苦手意識をもってしまうことにつながってしまいます。なぜなら、繰り上がりや繰り下がりの計算の理解が不十分だということは、頭の中で数を操作・イメージすることが難しく、この後の学習で苦労することになってしまうからです。
今回は、特別支援が必要な児童も含めて、クラス全員が「なるほど!」と理解できる授業づくりや教え方のポイントをご紹介します。お家での学習支援にも活用できる内容となっていますので、最後までご覧ください。
ポイントは、10のまとまりを崩す操作が理解できているか
繰り下がりの引き算では、一見計算ができているように見えても、本質的な理解ができていないケースがあります。
最も重要なポイントは、10のまとまりを崩して計算する仕組みを理解できているかどうかです。まず、「数え引き」から卒業できているかを確認することが大切です。数え引きとは、例えば「13-5」を計算する際に、「13、12、11、10、9、8」と指を使って1つずつ数を減らしていく方法です。この方法は計算の初期段階では自然な方法ですが、ずっとこの方法に頼っていると、計算に時間がかかるだけでなく、もっと大きな数の計算を学習する時に、対応しきれなくなってしまいます。
数え引きではない方法で繰り下がりのある引き算をするには、頭の中で以下のような操作をする必要があります。13ー5=8の計算を例にして説明します。
このように、頭の中で13という数を分けて、10のまとまりから引き算をし、残った数同士を足し算するという、複雑な操作をしなければ計算ができません。数え引きをしている子どもが、頭の中で数を自由に操作する段階に進んでいくのは、とても大変なことです。何度も何度もプリント学習をするような方法だと、子どもも嫌になってしまいますので、楽しく繰り返し学習できるような授業や支援が必要になってくるのです。
では、ここからは具体的な指導方法を説明します。
数の合成分解や、繰り上がりの足し算はできている?
繰り下がりのある引き算を学習する前に、まずはその前段階の学習ができているかどうかをチェックしましょう。
もしその前の段階でつまずいている場合は、そこに立ち戻ってしっかりと理解を深めることが必要です。先ほど、数え引きをしている段階では、繰り下がりの引き算を学習することが難しいと述べましたが、数え引き自体を行うことが悪いわけではありません。
その子の数の理解や操作の段階が、まだ数え引きよりも先の段階に進むことが難しい場合もあります。そういった子に、いきなり頭の中で数をイメージしよう!と働きかけることは、より混乱を招いてしまうため、その子の理解の段階をしっかりと確認してから学習を進めることが必要です。
数の合成・分解はできている?
繰り下がりの引き算を学習するのは、1年生の冬ごろですが、1学期の単元で「いくつといくつ」の単元があります。(教科書によって単元名は違います。)この単元では、数を操作して足したり分けたりする、数の合成・分解について学ぶのですが、ここで、数の合成・分解の概念を身に付けておくことが、非常に大切と言えます。
数の合成・分解は身に付くまで繰り返し取り組む必要があります。ゲームや友達とのやり取りを中心に、楽しく学べる指導方法を詳しく書いた記事が以下にありますので、ぜひ参考にしてみてください。
繰り上がりのある足し算はできている?
繰り上がりのある足し算が確実に理解できていないと、繰り下がりのある引き算の学習に進むことは難しいと言えます。なぜなら、繰り上がりのある足し算が身に付いているということは、頭の中での数の操作や、10のまとまりを意識した計算ができているということだからです。
つまり、繰り上がりのある足し算で身につけた数の感覚や操作の仕方が、繰り下がりのある引き算の土台となるのです。ここでしっかりと理解を深めておくことで、引き算の学習もスムーズに進めることができます。繰り上がりのある足し算の指導法については、以下の記事にまとめてあります。
具体物を使って、10のまとまりを崩す操作を分かりやすく教えよう
では、ここからは、繰り下がりのある引き算の教え方について説明していきます。子どもたちに分かりやすく教えるためには、具体物を使って、10のまとまりを崩す様子を視覚的に示すことが必要です。
①具体物を用いて、数をイメージさせる
まずは、13-5の式の通り、具体物を並べます。ここでは、13匹のミミズのカードを並べています。13匹のミミズは、同じ水色の枠に囲まれていて、一まとまりになっていますが、白い枠は「10と3」になるように分かれています。そうすることで、視覚的に10のまとまりを意識しやすくしているのがポイントです。子どもたちと一緒に声を出して数えながらカードを貼ると、とても楽しいです。
②10のまとまりを崩す必要性を理解させる
1年生の学習では、繰り下がりのある引き算の前に、15ー2のような、一の位の計算のみで答えを出せる引き算を学習しています。そのため、ほとんどの1年生は、繰り下がりのある引き算を見た時に、10のまとまりからではなく、1の位の数(ばらの数という言葉で習っている場合が多いです)から引こうとするはずです。
しかし、今回の13ー6の計算では、ばらの3匹のミミズから6匹のミミズを引くことができません。そのため、13を10と3に分けて、10匹のまとまりから、6匹のミミズを引く必要があるということを確認します。ここを理解することが、繰り下がりの本質的な理解につながります。
③10のまとまりを崩し、残った数を足し算する
10匹のミミズのまとまりから、6匹のミミズを引いていきます。ここでは、ミミズをカエルに食べさせることで、ミミズがいなくなるということを楽しくわかりやすく表しています。
10匹のミミズのまとまりから、みんなで声を出して数えながら、ミミズをカエルの口の中に入れていきます。ミミズを動かす操作を子どもたちにさせると、とても盛り上がること間違いなしです。そして残った4匹と、ばらの3匹を足すことで、答えは7になることを、具体物を操作しながら示すことで、子どもたちは繰り下がりの仕組みを理解できることでしょう。
④具体物の操作から、少しずつ頭の中での操作へ
具体物の操作を通して、繰り下がりの計算をしっかり理解した後は、数字や頭の中での数の操作に移行させていきます。そのためには、さくらんぼ計算がとても有効です。計算の過程で、13を10と3に分けますが、13の下に書いてある図がさくらんぼのような形をしているため、さくらんぼ計算と呼ばれています。
さくらんぼ計算をすることで、10のまとまりを意識しながら計算する思考のプロセスを、わかりやすく残すことができます。そのため、一見面倒なように思えますが、式を使って数字を頭の中で操作できるようになるために、とても重要です。
さくらんぼ計算の方法は以下の通りです。
はじめは10と6や、4と3をそれぞれ色分けしておくことで、視覚的にわかりやすいヒントになります。
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そしてこちらは、個別学習用。特別支援学級や、自宅学習などで、子供達が自分の手元で操作しながら学べるように作ってあります。教材リンク
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繰り下がりの引き算をマスターして、算数を得意科目に!
繰り下がりのある引き算の指導では、「できた!」という成功体験を積み重ねることが大切です。具体物を使った操作から、徐々に頭の中での計算へと移行していくことで、確実な理解を促すことができます。特に重要なのは、一人一人の理解度に応じた支援です。具体物が必要な児童には十分に操作させ、頭の中でイメージできる児童にはその方法で進めるなど、柔軟な対応を心がけましょう。
このような個に応じた指導を通じて、子どもたちは算数の楽しさを実感し、「もっと学びたい!」という意欲を持つことができるはずです。ぜひ、今回ご紹介した方法や教材を、授業や家庭学習に取り入れてみてください。