学級作り 支援の方法

教室環境をユニバーサルデザイン化で、支援が必要な子だけでなく、みんなが学びやすく!

ユニバーサルデザインという言葉を聞いたことがありますか?
日本では似た言葉であるバリアフリーと混同されがちですが、意味は少し違っています。

バリアフリーは、高齢者や障害者などの不便さを抱えている人から障壁を取り除くという意味で使われている言葉ですが、ユニバーサルデザインは、高齢者や障害者に向けてだけの特別なものではなく、年齢や、性別、障害の有無に関係なく、社会に生きる全ての人にとって使いやすく、わかりやすくデザインされたものという意味の言葉です。

学級には、指示の理解が難しい子、注意がそれてしまいがちな子、物の整理が苦手な子など、様々な子どもがいますが、ユニバーサルデザインを教室の中に取り入れることによって、その子達だけではなく、学級のすべての子どもたちにとって、教室が安心して学べる場になります。では、教室の中にユニバーサルデザインを取り入れるためには、どのような方法があるのでしょうか

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刺激(情報)を減らす

カラフルな掲示物や、校庭からの子どもたちの声……。教室の中は、様々な情報で溢れています。周囲からの刺激が多すぎると、子どもたちは注意がそれてしまい、学習への集中力が妨げられてしまいます。そのため、不必要な刺激はなるべく減らし、授業に集中できるような環境づくりをすることが大切です。

前面の掲示

教室の全面に掲示物が多く貼ってあると、視覚からの情報が多くなり、注意がそれてしまいがち。児童の作品などは教室の後ろや廊下などに貼る、普段使わない掲示物は必要なときにだけ貼るなどすることで、教室の前面がすっきりとし、先生の話や黒板に集中しやすくなります。また、先生の本棚の中身や、学習用具なども、その授業に使わないものであれば、無地の布などで隠すと良いでしょう。

机、椅子の音

一斉に机を動かす音や、誰かが突然椅子を引く音などは音に敏感な聴覚過敏の子にとって、辛いものです。椅子や机の足にテニスボールを取り付けることで、椅子や机を動かす音を軽減することができ、静かな環境で学べるようになります。椅子に取り付けるテニスボールは、公益社団法人の日本プロテニス協会さんが、社会貢献活動としてボールのリユースを行っています。詳しい取り付けの方法なども紹介されているので、ぜひホームページを見てみてください。

また、聴覚過敏の子への詳しい対応方法については、こちらの記事をお読みください。

時間を視覚化する

自閉症スペクトラムなどの特性によって、物事の見通しを立てて行動することが苦手な子がいます。「今何をすべきなのか」、「今やっている活動がどれくらいで終わるのか」、「この後何をするのか」が分かりやすく示されることで、安心して過ごせるようになります。他の子ども達にとっても、1日の予定が分かりやすく提示されることで、見通しを立てて安心して行動することができます。

1日の予定表を作る

教室後ろの黒板などに1日の予定を掲示する場所を作り、朝の会などで、その日の授業の内容や準備するものなどを確認します。避難訓練や行事の練習、担任の出張など、いつもと違うことがある時は、それを事前に伝えておくことも大切です。伝えたことは、メモに残しておき、予定がわからなくなった時にいつでも見返せるようにします。担任の先生にとっても、一度指示したことを何度も説明する必要がなくなり、児童も予定表を見ながら自分達で考えて行動できるようになります。

残り時間を視覚化する

発達障害の子は、時間の感覚が掴みづらい傾向にあると言われています。低学年の児童も、まだ時計の読み方がわからない児童も多く、時間で指示をされても、理解が不十分な子もいます。残り時間を示すタイマーがあれば、時間の区切りを意識しながら行動することができます。数字を読むのが難しい子に対しては、残り時間を視覚的に把握できるようにしたタイマーもあります。

こちらのタイマーは文字が大きくて読みやすく、おすすめです。

こちらは、残り時間を視覚的に把握できるタイマーです。

場所を視覚化する

教室の中が雑然としていると、子ども達は落ち着きません。落ち着いて学習に向き合うためには、整理整頓された教室環境が欠かせません。物の場所を視覚化することで、担任の先生の声掛けが少なくても、子ども達が自分達で教室を片付いた状態に保つことができます。

物の場所を視覚化する

  • 宿題の提出……漢字ノート、音読カードなど宿題で提出するものごとに100円ショップなどのカゴを用意し、文字やイラストなどをラベリングします。
  • 掃除用具、ロッカーなど……何をどこにしまうのかがわかるように文字やイラストのラベリングをしたり、綺麗に片付いた状態の写真を掲示したりしておくことで、整理整頓の手がかりになります。
  • 配膳台……食缶やお皿を置く位置に、テープやシールなどで印を付けておくことで、子ども達が主体となって給食準備をすることができます。
  • ゴミ箱……低学年の教室で、「先生、これは燃えるゴミですか?」とよく聞かれませんか?燃えるゴミ、燃えないゴミそれぞれのゴミ箱にイラストを貼っておくことで、自分でどちらのゴミ箱に捨てるかを判断できます。

動線を視覚化

  • 並ぶ場所に印をつける……ドリルの丸付けや先生への質問などで子ども達を並ばせていると、「先生、〇〇さんが押しました! 」などとトラブルになることはありませんか?床に適切な間隔で印を付けておくことで、綺麗に並ぶことができます。
  • ゴミを集める場所…教室の後ろの床に、ビニールテープで四角形の印を付けておくと、そこを目指してゴミを掃き集めることができます。

以上のような支援は、子ども達がスムーズに動けるようになったら、だんだん減らしていくことも大切です。

見やすい板書や文字で伝える

ディスレクシア(読み書き障害)の子、ロービジョン(弱視)の子、黒板の文字を写すことが苦手な子など、学級には様々な支援が必要な子がいます。授業中に子ども達が見る板書や、プリントの文字にもユニバーサルデザインを取り入れることは、学級全体が安心して学べることにつながります。

分かりやすく見やすい板書の工夫

分かりやすい板書にするためには、以下のような工夫があります。

  • 色や位置を統一する……目当ては赤色のチョークで囲んで黒板の左上に書く、まとめは青色のチョークで囲んで黒板の右下に書く、大切なことは黄色の文字で書くなど、板書の際のルールを決めて、どの教科の授業でも同じように板書することで、分かりやすくなります。
  • 絵や写真や図を取り入れる……絵や写真を板書に取り入れることで、視覚的に分かりやすくなります。算数などでは、タイルなどの具体物や絵カードなどを貼り、操作しながら説明することで、イメージしやすくなります。
  • よく使う言葉のカードを作る…①②③④の番号や、「めあて」「まとめ」「しき」「こたえ」などのよく使う言葉はカードにしてマグネットで貼れるようにします。わかりやすくなるだけでなく、板書にメリハリが出て綺麗に見えます。以下のリンクのショップから、板書用のカードが無料でダウンロードできます。印刷してラミネートするだけで繰り返し使えますので、ぜひお使いください。
Screenshot

UDフォント

U Dフォントとは、ユニバーサルデザインの考えに基づいて、みんなにわかりやすいように配慮された文字のことです。ディスレクシア(読み書き障害)や、ロービジョン(弱視)の子にとって、明朝体のように線の強弱があって先がとがっていたり、ゴシック体の「さ」のように、実際に書く文字との表記が異なっていたりする文字は「読みにくい」「わかりづらい」と感じやすいと言われています。UDフォントは、こうした子ども達を配慮して作られた文字です。株式会社モリサワ社が開発した「UDデジタル教科書体」というフォントが、Windows 10以降に搭載されています。「UDデジタル教科書体」は、アルファベットにも対応しています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

教室にユニバーサルデザインを取り入れよう

いかがでしたでしょうか。初めは少し手間がかかるかもしれませんが、教室にユニバーサルデザインを取り入れることで、支援が必要な子だけでなく、クラスの子供達全員が過ごしやすくなります。また、予定や物の場所などを分かりやすく工夫することによって、子ども達が自分で考えて動けるようになるため、担任の負担が減るという利点もあります。
全部を取り入れることが大変であれば、学級の子ども達の実体に合わせて少しずつ、できる範囲で取り入れてみてください。きっと、教室にユニバーサルデザインを取り入れることの良さを感じるはずです。

また、「失敗しても大丈夫な雰囲気を作る」、「子ども達がありのままでいられる学級を作る」ということも、担任の先生しか用意することができない、ユニバーサルデザインの環境です。支援が必要な子も、そうでない子も、誰もが安心して過ごせる学級作りを目指しましょう。

  • この記事を書いた人
管理人ちぃ

めい

当サイトの管理人。通常学級、通級指導教室、特別支援学級の担任を計11年間した経験を生かして『はったつルーム』での情報発信や教材作成をしています。 趣味はピアノ、アクセサリー作り(ハンドメイド作家としても活動中)。 3才の息子、1才の娘と台所育児や工作を中心とした、《遊びの中で学ぶ子育て》に挑戦中。

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