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発達障害の子の苦手をサポートできる道具9選!元特別支援学級担任が徹底解説。

発達に課題がある子の苦手をサポートする道具9選

「手先が不器用で道具をうまく使えない」「体の動きがぎこちなくて、体育が苦手」「授業に集中できず、どうしても体が動いてしまう」などなど、様々な課題を抱えている子がいます。苦手なことが多いと、自己肯定感が下がってしまい、学習や学校生活が苦しくなってしまうものです。先生方や、保護者の方も、その苦手さをどうにかしてあげたいと思いながらも、どう支援してあげたら良いかがわからず、困っているのではないでしょうか。

そんな子供達の苦手さは、その子に合った道具を使うことで解決する場合があります。本記事では、公立小学校で特別支援教育に10年以上関わってきた筆者がおすすめする、【発達に課題がある子の苦手をサポートする道具】を8つご紹介します。

ハサミ『きっちょん』

手や指先を使った微細運動が苦手な子にとって、ハサミで紙を切ることは難しいものです。ハサミは、「閉じる動作」と「開く動作」を交互に行うことで紙を切りますが、その2つの動作を絶え間なく行うことが、微細運動が未発達な子にとっては至難の技。この『きっちょん』は、スプリングによる補助がついており、開く動作を補助してくれます。また、刃先はプラスチックで覆われていますので、ハサミの操作に集中するあまりに指を切ってしまう…なんて危険もなく、安全に使うことができます。

トレーニング箸『はじめてのちゃんと箸』

微細運動が苦手な子に、もう一つおすすめなのが、『はじめてのちゃんと箸』。エジソン箸も有名ですが、ある程度の年齢のお子さんにはこちらがおすすめです。2本の箸を平行に保ったまま持てるように、シリコン製の補助具がついています。補助具は柔らかいので、箸を開くときの動きもバネのようにサポートしてくれ、自然に箸先を開くことができます。また、普通のお箸の持ち方にとても近いので、補助なし箸への移行もスムーズです。16cm(2歳くらいから用)と、18cm(5歳くらいから用)がありますので、お子さんの手のサイズに合うものを購入すると良いでしょう。

時間が見えるタイマー『タイムタイマー』

時計が読めない子や、時間の感覚が掴めない子に、時間を色で視覚化できる時計です。「あとどれくらい」が色でわかるようになっています。残り時間がわかるので、見通しを持って活動することができます。黒板に掲示することができるタイプや、手元に置いておけるタイプなど、様々な種類のものがあります。

集中力が続きづらい子は、終わりの時間を示すことで見通しがもてるため安心して取り組むことができます。

また、学習活動を5分ずつなど短い時間に区切り、終わるたびに少し会話をしたり息抜きをしたりすることで、結果的に長時間学習に取り組めるタイプの子もいます。

行動の切り替えが苦手で、ゲームやテレビなどの楽しいことがなかなかやめられない子は、自分で取り組む時間を決めさせると、納得して気持ちを切り替えられることがあります。

センサリーツール『ふみおくん』

授業中など静かに座っていなくてはならない時に、どうしても座っていられない子がいます。座っていられたとしても、椅子をガタガタ動かしてしまったり、手遊びが止まらなかったり……。そういった子達は、脳への感覚刺激が足りず、立ち歩いたり手遊びをしたりすることで刺激を得て、気持ちを落ち着かせようとしているのです。

そのため、感覚刺激を入れられるようにしてあげることで、行動が落ち着くことがあります。感覚刺激を得ることができる道具のことを、センサリーツールといいます。

こちらは、姿勢が崩れてしまったり、立ち歩いてしまったりする子におすすめのセンサリーツール。シリコンゴムでできている『ふみおくん』を椅子に取り付け、靴を脱ぐことで、足の裏や、すねなどから感覚刺激を入れることができます。椅子をガタつかせる、立ち歩くなどの行動を「不適切なもの」として取り除くのではなく、周りの迷惑にならないように、感覚刺激を入力することができます。

https://www.tiotoss.jp/products/detail.php?product_id=3790

『ふみおくん』は、こちらのリンクから購入できます。詳しい使い方の説明もホームページに載っています。

センサリーツール『かじれるくん』

こちらは、鉛筆をかじってしまう子におすすめのセンサリーツール。数年前に筆者が通級指導教室の巡回教員をしている時に、授業中に手持ち無沙汰になると鉛筆をかじってしまう子がいました。鉛筆が壊れるまで噛み続け、常に口の周りを真っ黒にしている子でした。

その時は「鉛筆を必要な時にだけその子に手渡す」という対処をしていましたが、この商品の存在を知っていれば、確実に保護者の方に勧めていたと思います。彼の「鉛筆をかじりたい」という欲求を、「鉛筆の代わりに噛んで良いものを与える」という形で満たしてあげることが、最良の支援だったと今でも後悔しています。

鉛筆だけでなく、口にものを入れてしまう子には、合う道具だと思います。

他にも、手でいじることで感覚刺激を入れられるようなゴムのおもちゃなど、その子に合うものであれば100円ショップなどで購入できるものでも構いません。その子の特性や好みなどによって、合うものは違うので、お子さんと一緒に色々と試してみることをおすすめします。センサリーツールは、一見すると授業に関係のない物に見えてしまうので、担任の先生の許可を取り、使用する上での約束をしっかりと決めて導入するのが良いでしょう。

縄跳びできない子の練習に最適!『エア縄跳び』

運動発達に課題がある子にとって、縄跳びはとても難しい運動です。『縄を回す動き』と、『タイミングを合わせて足を揃えて跳ぶ動き』を同時にしなくてはなりません。

その段階に行く前に、

  • 脇を閉めて縄をうまく回すことができない
  • 両足を揃えて、その場でジャンプすることができない
  • 一定のリズムで跳び続けることができない
  • まっすぐな姿勢を保ち続けることができない

などなど、つまずくポイントは様々です。この中の一つでもできない部分があると、縄跳びは跳べません。縄跳びって、一度も跳べないとつまらないですよね。苦手さを感じると、子どもは進んで取り組む気持ちがどんどんなくなっていきます。

こちらは元々は大人のダイエット器具ですが、縄がないために、縄を回す練習だけ行ったり、縄を回しながら跳ぶリズムを掴む練習をしたりすることができるため、縄跳びができない子でも、失敗せずに練習に取り組むことができます。さらに、交差飛びや、二重とびの練習にも役立つ優れもの!こちらは、片方だけに電池が入っていて左右の重さが違うので、電池を抜いて使うのがおすすめです。

滑らない物差し『ピタッとルーラー』

こちらの定規は、裏に滑り止めがついており、軽くおさえるだけで紙にピタッとくっついてくれます。そのため、手先が器用でない子でも、綺麗に線を引くことや、ずらさずに物を測ることができます。15cmの物と30cmの物があるので、用途によって使い分けられます。こちらの商品は、2015年の文具大賞にも選ばれています。

聴覚過敏用イヤーマフ『KsGear』

こちらのイヤーマフは、国内メーカーで作られた物で、小学生の子どもがつけることを想定して、軽さや付け心地のソフトさなどにこだわっています。『人よりも音が大きく聞こえてしまう』『必要な音だけを選びとって聞くことが苦手で、ざわざわした環境が苦手』などの特性をもつ聴覚過敏のお子さんがいます。こういった子たちにとっては、様々な音や子供達の声で溢れている学校生活はストレスに感じやすいのです。聴覚過敏用のイヤーマフは、会話の音など必要な音はカットしすぎず適度な大きさに聞こえるように調節してくれるだけでなく、いわゆる雑音のようなざわざわした音をカットしてくれる優れものです。学習に集中したい時、周りの環境がうるさいと感じた時などにつけることで、音への不安感を軽減させることができます。

結ばない靴紐『CATERPY』

靴紐を結ぶというのは、微細運動に課題がある子にとって難しい作業です。高学年になってくると、そもそもマジックテープの靴が少なくなってきますし、運動の強度が上がるので、足をしっかりサポートしてくれる、紐靴を使う方が足に負担になりにくいです。こちらの靴紐はゴムになっていて、普通の紐履の紐をこれに変えるだけで、しっかりと足をサポートしてくれます。よく伸びるので、脱ぎ履きも楽々です。

「靴紐がほどけた!」ということも無くなるので、忙しい先生や、子供連れの保護者の方にもおすすめです!(筆者も学校で愛用していました。)

その子の課題に合った道具を使って、苦手を支援しよう。

今回は9つの道具をご紹介しました。その子が何に困っているのかどのようなサポートがあればできるようになりそうなのかをよく観察して見極め、合いそうな道具を探してみてください。苦手さを支援できる道具を使うことで、不便さが減り、自分でできることが増えたり、その子が生活で感じているストレスを減らしたりすることができます。価格も手頃なものが多いので、ぜひ気軽に試してみてください。

  • この記事を書いた人
管理人ちぃ

chii

当サイトの管理人。通常学級、通級指導教室、特別支援学級の担任を計11年間した経験を生かして『はったつルーム』での情報発信や教材作成をしています。 趣味はピアノ、アクセサリー作り(ハンドメイド作家としても活動中)。 3才の息子、1才の娘と台所育児や工作を中心とした、《遊びの中で学ぶ子育て》に挑戦中。

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