学級作り 支援の方法

ADHD等の特性がある子が、授業中に立ち歩いてしまったら? 段階別3つの対応方法

「授業中に何度注意しても立ち歩いてしまう子がいる……」「立ち歩く子を他の児童が気にしてしまい、クラス全体が落ち着かなくなってきた……」など、授業中に立ち歩いてしまう子の対応に困っている先生がいるのではないでしょうか。

子どもが授業中に立ち歩いてしまう原因はいくつかありますが、その中でも、ADHD等の特性が原因で立ち歩いてしまう子に対しては、適切な対応をすることで、行動が改善します。

この記事では、小学校で特別支援教育に携わってきた経験を持つ筆者が、ADHD等の特性があり、じっとしていることが苦手な子の対応方法について、詳しく解説し、その対応方法を紹介していきます。

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叱っても立ち歩きはおさまらない!

ADHDの特性がある子は、「気が散りやすく、集中力が続かないため、長時間じっとしているのが苦手。衝動的に動いてしまうことが多い。」ということがわかっています。

そのため、立ち歩く行動に対して、叱り続けてよくなることはありません叱れば叱るほど、担任とその子の関係が悪くなる、自己肯定感が低くなるなど、より事態が悪化してしまうことも。また、他の児童は、叱り続ける担任を見ています。その結果、担任の態度が、他の児童に広がっていき、クラス全体がその子に対して批判的な見方をするようになります。また、叱ることで授業が止まることや、説教を聞き続けることが続くと、他の児童と担任との信頼関係も崩れていき、クラスの雰囲気も悪くなっていきます。

立ち歩いてしまった時の対応方法を3つ紹介

対応方法① その子の座席を最前列の1番奥にし、担任がこまめにアプローチできるようにする

まずは、立ち歩く行動を未然に防ぐことから始めてみましょう。その子の座席を最前列にします。

一番前の席にすることで、担任がアプローチしやすく、その子からほかの児童の様子が目に入りにくいので刺激が少ない、という利点があります。真ん中の席は、他の子から見て目立つので避けた方が無難です。また、廊下側もドアから外に出やすいですし、廊下を通る人の刺激が多いため、ADHDの特性がある子には向いていません。窓際の席は、外の景色や音に気持ちが向きやすくなるという点もありますが、カーテンを閉めるなどして刺激を減らすようにしましょう。

注意がそれているな。と感じたら、立ち歩いてしまう前に気持ちを担任に向けるようにします。ただし、授業を止めて働きかけることは極力避けましょう。クラスの他の児童が、授業に飽きてしまうからです。

立ち歩きを事前に防ぐ支援の例

  • 飽きていると感じたら、その子の前に立って話す。
  • 授業をしながら、ジェスチャーや表情でサインをする。(手を振る、グッドサインをして笑いかけるなど)
  • 授業に使う道具を、「ちょっと持っていてね」と渡す。
  • 見本をさせる、黒板の掲示物を貼らせるなど、アシスタント的な役割を与えて動いてもらう。
  • 立って音読をする、全員で伸びをするなど、授業の中に動きを取り入れる。

など、ちょっとしたことでも、その子の気分が変わるきっかけを与えます。それでも立ち歩いてしまうなら、次の方法を試してください。

対応方法② 叱る以外の働きかけで、着席を促す

先にもいったように、叱り続けてよくなることはありません。叱る先生、叱られる子、見ている子、全員が嫌な気持ちになり、学級全体の雰囲気が悪くなります叱る以外の働きかけをすることで、担任とその子の関係は崩れず、クラスの雰囲気も悪くせずに着席を促すことができます

では、叱る以外にどんな働きかけをしたらよいのでしょうか? 例を少し挙げてみます。

立ち歩く子への働きかけの例

  • 立ち歩いている間に、先生がその子の席に座ってしまう。
  • 「え、〇〇さんどうしたの? 何かあった?」とびっくりして見せる。
  • 「あ、ちょうどよかった! 前に来て、手伝って」と呼ぶ。
  • 突然指名をして問題に答えさせ、「正解! イエーイ!」と授業に気分を乗せながら席に連れていく。
  • 「保健室の先生に、〇〇を届けてくれる?」など、教師の指示のもとで、授業を離れて気分転換できる時間を作る。
  • 「今は立ち歩くべき時間ではないので、座りましょう」と、とるべき行動を淡々と伝える。

などです。ここで重要なのは、おふざけになりすぎないこと。例えば先生が自分の席に座ってしまうのが楽しくなって立ち歩くことを繰り返すようであれば、「それは違う」「先生は君に座ってほしいけれど、皆の前で強く叱りたくないから注意をしているんだよ」と毅然とした態度で伝えます。

対応方法③ その子と担任との間で、気持ちを落ち着かせるための約束を作る

ここまでの方法を試しても、解決しないことはよくあります。

ADHDの特性がある子には、どうしても体が動いてしまう、どうしても座っていられない、という子がいるのが事実です。その子の発達段階的に、45分間の授業を着席して過ごすということがまだ難しいのかもしれません。そんなときは、その子としっかり話をして、離席するときの約束を決めます

離席したくなった時の気持ちの落ち着け方を、その子と一緒に話し合って決めます。例えば、約束したことは紙に書いて見やすいところに貼っておくなど、いつでも見返して思い出せるようにします。その約束のもとで、以下のようなやりとりをします。

約束すること

  • 休む場所(先生の机の下、教室の1番後ろ、保健室など)
  • 時間(5分間、10分間など。キッチンタイマーなどを使って、わかりやすく時間を示すことも有効。
  • やること(本を読む、机に突っ伏す、教室にいる金魚を眺めるなど)
くまくん
くまくん

きりん先生、5分間後ろに行って、本を読んでもいいですか。

いいですよ。落ち着いたら戻ってきてね。

きりん先生
きりん先生

ここで大事なのは、勝手に立ち歩くのではなく、担任との約束のもと離席するということと、離席することで、気持ちをリセットし、授業に戻れるようにし向けることです。また、約束を忘れて立ち歩いてしまった場合は、必ず上記のようなやりとりをして、担任の許可を得て気持ちを切り替えるということを徹底していきます。それを繰り返していくことで、その子自身が、自分がどんな時に立ち歩きたくなってしまうかや、どうしたら気持ちを落ち着けられるかを学ぶことができ、少しずつ行動が落ち着いていきます。

立ち歩いてしまう子の気持ちに寄り添った支援をしよう

今回は、「ADHDの特性がある子が授業に立ち歩いてしまう時の対応方法」を3段階にまとめました。このような方法を試してみても立ち歩きが改善しない場合は、担任の力だけで問題解決をすることが難しい場合があります。その子の発達段階や特性、家庭環境など、他に要因があるのかもしれません。

決して担任一人で抱え込まずに、学年の先生、管理職、特別支援コーディネーター、スクールカウンセラーなどに相談しながら、チーム学校でその子の支援をしましょう。周りの人に頼ることは恥ずかしいことではないです。より多くの大人の目で見て、その子にとってより良い支援の方法を考えることが、ベストな支援に繋がります。

  • この記事を書いた人
管理人ちぃ

めい

当サイトの管理人。通常学級、通級指導教室、特別支援学級の担任を計11年間した経験を生かして『はったつルーム』での情報発信や教材作成をしています。 趣味はピアノ、アクセサリー作り(ハンドメイド作家としても活動中)。 3才の息子、1才の娘と台所育児や工作を中心とした、《遊びの中で学ぶ子育て》に挑戦中。

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